ヒトリゴト
20年の大工人生がくれた『ご褒美』
庭山さん、ドムスさんからのご紹介で、築120年の古民家に出会った。
このような建築を前にした時、私たちのような大工工務店であれば誰もが、「次の世代へ、正しい形でこの建築の価値を残したい」と強く願うはずだ。 ただ、よくある古民家カフェ風に、見た目だけを綺麗にする表面的な改修では意味がない。日々を営む「住宅」である以上、温熱環境や構造から根本的に見直す本物の改修をしなければ、やる価値がないと考えている。
その確固たる基準を持つため、まずは桃李舎さんに「限界耐力計算」を依頼し、構造の安全性を数値として徹底的に担保することからスタートした。
解体工事も、重機で一気に壊すようなことはしない。 120年間この家を支えてきた部材に敬意を払い、すべて職人の手による「手壊し」で行った。
今回の現場は、あらためて「職人の手助けがあってこそ、本物の家造りができる」という事実を再認識させてくれる場となった。
現代ではめっきり減ってしまった、竹を組み、泥を塗り重ねる伝統的な「土壁施工」。 こうした残すべき伝統技術を次の世代へ継承していくことも、私たち大工工務店の重要な使命だと確信している。
ただし、古民家改修において「伝統の継承」だけで終わってしまっては、本当の意味で住み継がれる家にはならない。現代の暮らしに耐えうる「確かな耐震性」と、快適に暮らすための「圧倒的な温熱性能(気密・断熱)」を高い基準で両立させることが不可欠だ。
古民家改修は、決して簡単な工事ではない。 新築以上の手間、職人の高い技術、そして相応の予算が必要になる。
だからこそ、このプロジェクトを成し遂げるためには、私たち工務店の覚悟だけでなく、「この歴史ある家を、何としても残して住み継ぐのだ」というお施主様の強い意気込みと、深い信頼関係が不可欠であると思う。
お施主様の揺るぎない想いと、それに応えた職人たちのこだわり。 すべてが噛み合って、この家はまた次の100年を生きる命を宿した。
正直、本当に大変な現場だった。しかし、大工を20年続けてきたことへの「ご褒美」として、このプロジェクトをやらせてもらったのだと、今ひしひしと感じている。
この残すべき建築に命を吹き込めたのは、お施主様の覚悟と、力を尽くしてくれたすべての職人さんたちのおかげだ。
関わってくれたすべての人たちに、心から感謝したい。 この経験を大きな糧にして、これからもブレずに、本物の家造りと真摯に向き合っていきたい。






